2021年3月13日土曜日

不思議な“つぶ”のこと その③


することがなく、空白の時間ができると、人は普段考えないことを考えるのかもしれない。一年前、未知のウィルスに怯えながらも、私がぼんやりと考えていたのはこんなことだった。

(植物や種の目線からこの世界を見たら、どんなふうに見えるんだろう……)

(人間中心のものの見方から自由になって、もっとおおらかに、もっと長い目で、この地球のこと、生きていくということを捉えてみたいなあ……)

そんなある日、「一緒にアニメーションをつくりませんか?」と声をかけてくれた人達がいた。自粛期間中にできることをみんな試行錯誤している頃だった。

私はこのナイスタイミングに喜び、「植物の種を主人公にしてみたいです」と思い切って提案してみた。最初は「種、ですか…?」と皆頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいた(と思う)けれど、さまざまな種たちのユニークな写真集を見せたり話をしていくうちに、「ワクワクしますね。やってみましょう!」と話が盛り上がった。

そこから、いろんな種探しがはじまり……

いろんな種キャラクターのアイデアが出ては消え……

さらに一年近くが経ち……

ようやっと、ささやかな種キャラクターが一つ誕生した。

その名も、「寝たねちゃん」

私に「一緒に何か作りましょう」と声をかけてくれた人がいて、いろんなアイデアを出し合ってくれた人がいて、絵に可愛らしい動きをつけてくれた人がいてくれて、誕生できました。

ゆっくり育って行きますように。


2021年3月11日木曜日

3月11日

今朝は、ラジオ深夜便「明日へのことば」を聞いていて目がさめた。

10年前、福島の原発で働いていた吉川さんという男性のお話だった。「この地で起きたことが、社会を豊かにすることにつながらなければいけないと思う」という声が印象に残った。

「明日へのことば」(加害者と被害者の二重苦を越えて)

このラジオ、まだ暗い夜明け前に一人で耳を傾けていると、私にとって、真っ暗な海の中でぼんやりと光る灯台のような存在に思える。

最後はいつも誕生花が紹介されるのだけど、今日は涙が出た。  

良い一日にしようと思った。

追記

次の日のラジオ深夜便「明日へのことば」も聴いた。震災の津波で三人のお子さんを亡くした男性のお話。胸に来るものがあった。

「明日へのことば」(「死んでも いい」から「精一杯 生きる」へ)

2021年3月9日火曜日

不思議な“つぶ”のこと その②


そんなわけで、私はやることもなく毎日散歩していた。

一年前のちょうどいまごろ、あちこちで椿がきれいに咲いていた。真っ赤な椿の花が木の根元のところにボタボタとたくさん落ちて、遠くから見ると赤い色が鏡写しのようになっていた。

ものは壊れ、

ひとは死ぬ。

でも、

土に落ちた花びらは肥料になり、

土に落ちた種たちは発芽の準備をする。

こんなふうに・・・







・・・終わりがない。

すごいなあ、不思議だなあ。

歩きながら、そんなことを考えていた。

私は散歩の途中に街の画材屋に寄り、好きな色の色鉛筆を何本かと、スケッチブックを二冊買った。色鉛筆なんて買ったのはいつぶりだろうか、思い出せない。

その時期に描き始めた草花は、日々をつづったコラムの間に押し花のように入れてもらった。



2021年3月3日水曜日

不思議な“つぶ”のこと その①


去年の今頃、私は毎日、植物の種や花の図鑑をながめて過ごしていた。

人にも会えず、仕事がなくて暇だったというのもあるけど、植物に触れたり見たりしていると不思議と心が穏やかになるからだった。

『世界で一番美しい種子図鑑』をめくると、「こんなに美しい色と形の種があるんだ……でも、なぜ?」と興奮と同時に謎が深まった。 

● 藤原辰史さんの「植物考」を読むと、勝手に決め込んでいた植物へのイメージがどんどん変わっていった。 

●「クソでもいいから植えろ」と語りかけるロサンゼルスの園芸家の話を聞いて、「身近なところから始めれば良いんだ!」と勇気をもらえた。

どんなに大きな樹も、最初はほんの小さな“つぶ”だった。

人は土に埋めても芽を出さないけど、植物の種は土に埋めれば芽を出す。

知れば知るほど、この身近で不思議な“つぶ(種)”に魅了されていった。

わたしは植物図鑑を閉じ、実際にこの“つぶ”を埋めてみることにした。 

が、なかなか難しい……。撒けばすぐ出る!というものでもないらしい(ハスの種なんて2千年も発芽しないものもあるという) 。

たくさん撒いたコスモスの種は芽が柔らかくておいしいのか、ほとんどが虫に食われてしまい、一輪だけ生き残ったものが小さなピンク色の花を咲かせた。 

神社の境内で拾ってきた菩提樹の種も、アボカドを食べて残った種も、いまだに芽を出さない。いつか忘れたころ出てくるだろうか。

菩提樹のタネ

たくさんの種たちをスケッチ。