去年の今頃、私は毎日、植物の種や花の図鑑をながめて過ごしていた。
人にも会えず、仕事がなくて暇だったというのもあるけど、植物に触れたり見たりしていると不思議と心が穏やかになるからだった。
●『世界で一番美しい種子図鑑』をめくると、「こんなに美しい色と形の種があるんだ……でも、なぜ?」と興奮と同時に謎が深まった。
● 藤原辰史さんの「植物考」を読むと、勝手に決め込んでいた植物へのイメージがどんどん変わっていった。
●「クソでもいいから植えろ」と語りかけるロサンゼルスの園芸家の話を聞いて、「身近なところから始めれば良いんだ!」と勇気をもらえた。
どんなに大きな樹も、最初はほんの小さな“つぶ”だった。
人は土に埋めても芽を出さないけど、植物の種は土に埋めれば芽を出す。
知れば知るほど、この身近で不思議な“つぶ(種)”に魅了されていった。
わたしは植物図鑑を閉じ、実際にこの“つぶ”を埋めてみることにした。
が、なかなか難しい……。撒けばすぐ出る!というものでもないらしい(ハスの種なんて2千年も発芽しないものもあるという) 。
たくさん撒いたコスモスの種は芽が柔らかくておいしいのか、ほとんどが虫に食われてしまい、一輪だけ生き残ったものが小さなピンク色の花を咲かせた。
神社の境内で拾ってきた菩提樹の種も、アボカドを食べて残った種も、いまだに芽を出さない。いつか忘れたころ出てくるだろうか。
菩提樹のタネ |
たくさんの種たちをスケッチ。 |