2021年3月9日火曜日

不思議な“つぶ”のこと その②


そんなわけで、私はやることもなく毎日散歩していた。

一年前のちょうどいまごろ、あちこちで椿がきれいに咲いていた。真っ赤な椿の花が木の根元のところにボタボタとたくさん落ちて、遠くから見ると赤い色が鏡写しのようになっていた。

ものは壊れ、

ひとは死ぬ。

でも、

土に落ちた花びらは肥料になり、

土に落ちた種たちは発芽の準備をする。

こんなふうに・・・







・・・終わりがない。

すごいなあ、不思議だなあ。

歩きながら、そんなことを考えていた。

私は散歩の途中に街の画材屋に寄り、好きな色の色鉛筆を何本かと、スケッチブックを二冊買った。色鉛筆なんて買ったのはいつぶりだろうか、思い出せない。

その時期に描き始めた草花は、日々をつづったコラムの間に押し花のように入れてもらった。