1.
去年の暮れ、ある方から新聞の切り抜きをいただいた。
去年の暮れ、ある方から新聞の切り抜きをいただいた。
難しいけれどいい文章だなと思ってノートにはりつけ、しばらく眺めて暮らした。
2.
この間、病気で臥せって、死んでいく女の人の役を演じた。
そのときに、ふと思い出してまた読んだら、するする溶けるように身体の中でわかった気がした。
鳥は空を信じているから飛べるんだなあ。
鳥は空を信じているから飛べるんだなあ。
3.
撮影が終わって3日くらいぼんやり過ごしていたら、突然目が真っ赤になってみるみる腫れ上がった。寝れば治るかと思って、朝起きると目が開かない。目やにがびっしりと両目にくっついていて「いま開けんといて」と言わんばかりに工事中になっていた。手探りで洗面台までいき、ぬるま湯で硬い岩みたいになった両目をゆっくり溶かしたらだんだん世界が見えて来た。小岩さんのような目を隠すために、初めてサングラスを買った。
人に会いに行く予定もキャンセルして、川原の土手に座っていた。ゆっくり飛び立つ白鷺を眺めながら、「まるで恐竜だなあ」と思った。
一羽の鳩が飛んできて私の近くに止まった。一歩ずつ、一歩ずつ、にじりよってくる。ずいぶん距離を縮めてくるので見ると、その鳩、足の指が1本しかなかった。「わたしたちケガしている同士、おんなじね」と言わんばかり、シンパシーが合ったのかもしれない。しばらく私たちは広い土手で日向ぼっこをした。