2022年8月17日水曜日

終わりの始まり

先日、『時代革命』というドキュメンタリー映画を観に行った。

香港で起きた民主化デモの最前線。堅牢な黒い壁に次から次へと体当たりしていく、柔らかい無数の生卵のような香港の人たちの姿が映されていた。途中、泣きすぎて気分が悪くなって出ようかと思ったけれど、最後まで見届けようと思った。エンドロールが終わって席を立ち上がるときは、ふらふらした。すすり泣きがあちこちから聞こえていた。

「水になる」という柔軟に闘いつづける作戦のこと。「終わりの始まり。始まりの終わり。」という言葉が心に残った。その日はちょうど七十七年目の終戦記念日だったのだけど、何一つ終ってない気がした。

いま読んでいる香港の作家、ホン・ライチューの小説『秘密警察』に出てくる〈瀕死の猫〉のことを思った。やはり、あの〈猫〉は、もしかしたら自由意志の象徴かもしれない。知らぬうちに奪われていく自由を取り返すために、主張して闘って、ボロボロになった魂かもしれない。


友人から小さな睡蓮の種をもらった。とても堅くて割れそうにない種の中から、とても柔らかくてちいさな葉っぱが出てきた。不思議すぎる…。