「やっほー!シネマ〜対話篇」の収録が終わり、松本からの帰り道一人になって、暗くなった外の景色を見ながら涙が出てきた。理由もわからないまま、涙はそのまま30分くらい流れ続けた。なぜ、私は美帆さんに会いに長野まで行ったのだろう?と思った。
大人になってから出会ったとても仲の良い夫婦が二組いた。一組は、女性の友人が写真を撮っていて、男性の友人が絵を描いていた。もう一組は、二人ともミュージシャンだった。それぞれの家に遊びに行っては、私たちは夜遅くまであれこれいろんな話をした。
その二組のカップルは同じタイミングで子供を産み、ほとんど同じタイミングで東京を離れて移住した。一組は長野へ、もう一組は福岡へ。私によく懐いていた黒猫も、一緒に福岡へ行ってしまった。絵描きの友人は引っ越す前に、私に言った。「東京の良さも捨てたくないよ。でも今は生活のことで頭がいっぱいだ」。 彼が最後に描いていたのは、一足の靴のつま先が二股に分かれている絵のシリーズだった。まるでどっちの方向に歩いて行ったものか、立ち往生しているように見えた。
私の中にもいつからかずっとこれに近い感覚があったと思う。
でも、と言ってみる。無い物ねだりをしても仕方がないのだ。
もう何年も前に、私が人生の大きな局面に頭を抱えていた時、魅力的な先輩の女性がニッコリ微笑んでこんなふうに言ってくれたことがある。私は今だにこの言葉が忘れられない。
「白黒はっきりつけているうちは子供よね、真歩さん。」