もやもやくんへ
一年前、何してた?
一年前、私は毎日海の底を歩いてた。
歩いているうちに心がどんどん固く重くなっていくのが分かった。
見ると、びっしりと白いものがこびりついてた。フジツボだった。
どんなに固い岩でこそぎ落とそうとしてもだめだった。
私はあきらめてそのかさぶたみたいになった心を抱えながら歩き続けた。
何日かたって、私は泣くかわりに笑うことにした。
フジツボが出てきたら、すぐに立ち止まってなるべく大きな声で笑った。
初めは難しくても、空元気でも、演技することならできた。
ずっと演技しつづけたらそれは本当になった。
もうすぐ陸は近いって、頭の上でちらちらゆれる太陽が教えてくれた。
もやもやくん、あの固くて白いものは何だったんだろう。
あんなことって、本当にもう二度と経験したくないよ。
あれはもう終わったって、フジツボは戻って来ないって、毎朝思いながら目を覚ますよ。