2016年7月14日木曜日

もやもやくんへの手紙




もやもやくんへ

一年前、何してた?
一年前、私は毎日海の底を歩いてた。
歩いているうちに心がどんどん固く重くなっていくのが分かった。
見ると、びっしりと白いものがこびりついてた。フジツボだった。
どんなに固い岩でこそぎ落とそうとしてもだめだった。
私はあきらめてそのかさぶたみたいになった心を抱えながら歩き続けた。

何日かたって、私は泣くかわりに笑うことにした。
フジツボが出てきたら、すぐに立ち止まってなるべく大きな声で笑った。
初めは難しくても、空元気でも、演技することならできた。
ずっと演技しつづけたらそれは本当になった。
もうすぐ陸は近いって、頭の上でちらちらゆれる太陽が教えてくれた。

もやもやくん、あの固くて白いものは何だったんだろう。
あんなことって、本当にもう二度と経験したくないよ。
あれはもう終わったって、フジツボは戻って来ないって、毎朝思いながら目を覚ますよ。





海の絵を買った。去年知り合った片山高志くんが描いた作品。
音楽が送られて来た。越川さんから。
どちらも、とても気に入っている。