2017年7月14日金曜日

コンプレックスについて考えた日


自分が「よくない・隠そう」と思っていることが、他人にとっては「どうでもいいこと・そここそ魅力」みたいなことがよくある。
たとえば、私は声がコンプレックスだった。子供のころからなぜか少しかすれていてハスキーで、まあ良く言えばジャズシンガーみたいだった。でも、小学生にとってそんな声はありがたくも何ともない。少女漫画のヒロインみたいな声がいいわけだ。休み時間男子に追いかけられる女の子たちの「キャー」という甲高い声に憧れて、家でひとり「キャー」と言う練習をしたりした。

その頃は、コンプレックスはいつか魅力に転じるかもしれないなんて思いもしなかった。でも何年も自分の声と付き合っていくうちに、「まあいいや」という諦めから「興味深い」という希望にまでなってきた。なにしろ、いま一番やってみたいのは声の表現なのだから。
そう、ちょっとしたことで価値観はひっくり返る。だから、少しくらい人と違うところがあっても、気にせず堂々とやったほうがいい。隠そうと隠そうと思っていることほど、逆にあけっぴろげてみると案外世界が開けるかもしれないのだから。(まあ、気にしている間にこういう境地になれれば苦労しないけどね!)


いま、面白い本を読んでいる。
著者は、イッセー尾形さんの一人芝居の演出をずっとされてきた森田雄三さん。ページをめくるたびに、笑いと一緒に何かが音を立てて崩れていく感じがする。最後の方でこんなことが書いてあった。
余談になるが、わが事務所「株式会社イッセー尾形・ら」には、「四国の四県の名前を言いなさい」という入社試験もどきがある。もちろん、香川、徳島、愛媛、高知で正解だが、正解者は不採用となる。理由は「他所でも働けるから」といった冗談程度のものだ。(『間の取れる人 間抜けな人』)
さっそく関西に住む友人に電話してみた。
「もしもし。突然だけどさ、四国の四県のなまえ全部いえる?」(ちなみに私は香川県しか言えなかったけど、それについては伏せた。)
「香川、徳島、愛媛……分からない」と恥ずかしそうに笑う声がした。はっはっは。
私も友人もめでたく採用であった。