2023年6月30日金曜日

詩集を選んだ日


ふと
誰かに詩集を贈りたくなって、新宿の紀伊国屋書店の二階で本棚の前に立つ。
詩の本棚だ。
ほとんど知らない人の名前とタイトル。
いろいろページをひらいてみる。しっくりこない。
『港の人』という本を手にとる。
タイトルがいいと思った。触れてみていいと思った。
紺色の布地の表紙に銀色の文字も洒落ている。
内容はまだよくわからないけど、並んでいる文字がなんだか心地よさそうだ。
こんど恋人にあったら
たましい、こわしちゃってね、っていってやろうか
というところが目に飛び込んできて気に入った。買うことにする。


書店を出て路地裏のカフェに来た。
ソファが広々していていい雰囲気だ。店員さんにスマホのQRコードからメニューを読み込んで注文してくださいと言われ、「携帯を忘れました」と嘘をつく。
今日初めてのウソ。

選べない。タッチパネルの寿司屋のメニュー。
選べない。パソコン画面の中の映画タイトル。
訴えかけてこない。情報になってしまったものたち。
手触りがない。全部が記号だから。

神様、お願いします。世の中を全部タッチパネルにしないでください。
選ぶ楽しみがなくなっちゃうから。