ふと
誰かに詩集を贈りたくなって、 新宿の紀伊国屋書店の二階で本棚の前に立つ。
詩の本棚だ。
『港の人』という本を手にとる。
タイトルがいいと思った。触れてみていいと思った。
こんど恋人にあったらたましい、こわしちゃってね、っていってやろうか
というところが目に飛び込んできて気に入った。買うことにする。
書店を出て路地裏のカフェに来た。
今日初めてのウソ。
選べない。タッチパネルの寿司屋のメニュー。
選べない。パソコン画面の中の映画タイトル。
訴えかけてこない。情報になってしまったものたち。
手触りがない。全部が記号だから。
神様、 お願いします。世の中を全部タッチパネルにしないでください。